世界中の英語話者のうち、その大半を占めているのは、実はノンネイティブスピーカー、いわゆる英米圏以外の人たちだと言われています。それぞれの母語が英語に与える 影響 、発音の特徴などを通して、「国際言語」としての英語をご紹介します。
- 出版社: アルク
- 発売日: 2019/01/05
- メディア: 雑誌
世界を取り巻くリアルな英語事情
現在、世界的な「公用語」と言っても過言ではない英語。世界各地で英語が使われるようになり、注目を集めるのが「国際英語論」です。これについて、中京大学国際英語学部教授の榎木薗鉄也先生はこう説明します。
「国際英語論」とは、さまざまな特徴的な英語に対して寛容になろう、という考え方です。世界中を人々が行き来し、ICTの発展で世界の人々が情報交換をする現在、相互理解と国際言語としての英語の役割がいっそう重要になりつつあります。円滑な相互理解のためには、やはりネイティブの英語の規範性に加えて、多様なノンネイティブ英語への寛容性がより重要になると私は考えます。日本人の中にも、「ちょっと発音に自信がないから……」「文法を間違えるから……」などと、ネイティブと比較して自分の英語に引け目を感じる方もいるかもしれません。そうではなく、話す相手にも同じような状況の人がいると考え、お互いの文化や言葉を尊重できるといいですね。
アジアの英語表現
さまざまな国の人が話す英語の中でも、母語の干渉を受けたりする中で独自の色が強くなっていったのがインド英語。現地の言葉が英語でも使われる場合や、もともと英語にある単語を独自の意味で使っていることも多々あるそうです。榎木薗先生によると、インド英語に特有の表現には次のようなものがあるそうです。
インド英語に特有の表現では、achcha(アッチャー)は英語のgoodと well に相当し、特に北インドでは英語を話すときに多用されます。このほかにもシンガポールやフィリピンなど、アジア圏には興味深い英語表現がたくさんあるそうです。
Raju, your salary will be raised.
(ラージュ、君は昇給するよ)
Achchaa!
(ウヒャー!)
という感じで使います。
インド英語については、榎木薗先生の著書『 インド英語のツボ―必ず聞き取れる5つのコツ― 』でより詳しく解説されています。
- 作者: 榎木薗鉄也
- 出版社: アルク
- 発売日: 2016/06/20
- メディア: 単行本
聞いただけでわかる?私の国はどこでしょうクイズ
ネイティブスピーカーではない人が英語を話す際、程度に差はあれど、発音などに母語の 影響 が出るのが一般的です。
日本に留学中の学生さんに ご協力 いただき、ある英文を読み上げてもらいました。彼らの出身地はどこの国か、聞いただけでわかるでしょうか?
まずは、挑戦してみてください。
私の国はどこでしょう?①
私の国はどこでしょう?②
いかがでしたか?
クイズの答え
1人目の話し手の出身地は、タイ。アクセントやイントネーションについて、龍谷大学教授の里井久輝先生はこう解説します。
例えばimportant、societyなど、多くの箇所で見られるように、全体として句末や語末の音節での強勢や、上昇調のイントネーションがとても特徴的です。そして2人目の話し手は、アフリカのガーナ出身でした。彼の英語について、里井先生はこう説明しています。これは、母語であるタイ語の語の最後の音節に置かれる強勢のパターンや、声調(音節の中での高低・昇降で語義を区別する機能)の特徴が英語に転移したものと考えられます。
流暢ですが、あまり抑揚がなく単語の音節ごとに等間隔で発音される音節拍リズムの印象を受け、全体としてリズムや分節音(母音や子音)に母語の 影響 が感じられます。このように、いろいろな国の人が話す英語の特徴を少しずつ知っておくと、その英語を話す人に会ったとき、聞き取りのヒントになるかもしれません。
もっといろいろな英語を聞いてみよう
ENGLISH JOURNAL 2019年2月号では、さらに6人の、それぞれ別の国から来た留学生の英語を収録し、それぞれの特徴などを解説しています。
また、2014年にノーベル賞を受賞したマララ・ユスフザイさんや、作家のチママンダ・ンゴズィ・アディーチェさんなどのスピーチも聞くことができます。発音や文法といった些細なことにとらわれず、「人に伝わる」英語を話すにはどうしたらいいのか、彼女たちのスピーチから、考えてみましょう。
- 出版社: アルク
- 発売日: 2019/01/05
- メディア: 雑誌
構成・文:江頭 茉里
ENGLISH JOURNAL編集部員。夢は自分が編集した本ばっかりの本棚を作ること。 熱しやすく、冷めにくい。好きなもの・趣味が多すぎるのが悩み。
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